司法試験本番まであと2か月という時期の勉強

弁護士 井垣 孝之   2017年3月9日 (木)

最近、Ask.fmなどで司法試験直前期の勉強についてご質問をいただきます。

たとえば、以下のようなご質問です。

「択一と論文どれくらいの比率で勉強されてましたか?」

「この時期の勉強で、どのように心がけられてましたか?」

「直前期にはどんな勉強をしていましたか?」

今日は、こういったご質問に回答しようと思います。

司法試験まで残り2か月の時期にしていたこと

これくらいの時期は、1回目の司法試験受験時の課題が基本的な概念の不正確さと問題分析の精度の低さだったので、特に問題分析の精度を上げる訓練をしていました(敗因分析について書いたコラムも参照)。

具体的には、旧司法試験の過去問を使ってひたすら答案構成をしていました。
 

1回目受験したときは、私はまだ論点を探しに行っていました。

問題分析の際に論点探しをしていると、思い込みにとらわれたり、分析が「ほぼ勘」(たぶんこういう問題だろうという根拠のない決めつけ)になったりしてしまい、解ける問題だと解けるけど、解けない問題は空中戦になってどんどん法律的でない作文になっていくという傾向にありました。

そこで、出題趣旨を大きく外さないために、フレームワークを使って自らの思考に制約をかけることで、問題分析の精度を安定させることを目指しました。

 

フレームワークを使った旧司法試験の問題分析の例

私は旧司法試験の問題と出題趣旨を使っていたので、実際にどんな感じでやっていたのかをお見せしましょう。

題材は平成22年旧試験の民法です。
 

平成22年旧司法試験民法

第1問

現在90歳のAは,80歳を超えた辺りから病が急に進行して,判断能力が衰え始め,2年前からしばしば事理弁識能力を欠く状態になった。 絵画の好きなAは,事理弁識能力を欠いている時に,画商Bの言うままに,Bの所有する甲絵画を500万円で売買する契約をBと締結し,直ちに履行がされた。

この事案について,以下の問いに答えよ。なお,小問1と小問2は, 独立した問いである。

1(1) Aは,甲絵画をBに戻して500万円の返還を請求することができるか。また,Bに甲絵画を800万円で購入したいとい う顧客が現れた場合に,Bの方からAに対して甲絵画の返還を請求することはできるか。

(2) AがBに500万円の返還を請求する前に,Aの責めに帰することができない事由によって甲絵画が滅失していた場合に, AのBに対するこの返還請求は認められるか。Bから予想される反論を考慮しつつ論ぜよ。

2 AB間の売買契約が履行された後,Aを被後見人とし,Cを後見人とする後見開始の審判がされた。AB間の甲絵画の売買契約にに関するCによる取消し,無効の主張,追認の可否について論ぜよ。

 

この問題を、37の法律フレームワーク225頁以下に記載されている民法の答案作成のフレームワークを中心に使いつつ分析していきます。

以下の内容は、答案構成をしながら頭に思い浮かんだものをメモしたものです。すみカッコ内については素朴に疑問に思ったことをそのまま書いています。

1(1)について

STEP1 訴訟物の選択

訴訟物は意思無能力を理由とする売買契約の無効に基づく不当利得返還請求権(A→B、B→Aの2つ)

STEP2 請求原因の要件事実を列挙し、具体的事実を仮あてはめして争点を抽出

(A→Bの請求)
・甲絵画を500万円で売る売買契約の存在
・契約当時Aに意思能力がなかったこと
・500万円の利得(B)、損失(A)、因果関係
→問題なく認められる

(B→Aの請求)
要件事実は同じ
→問題なく認められそうだが、弱者保護という政策的配慮から意思無能力者側から主張できないことになりそう・・・
【要件事実的には(というか訴訟では)どのように主張する??】

 

1(2)について

STEP1,2(A→Bの請求)

請求原因の要件事実は同じ
 

STEP3(Bの反論したいこと)


・無効でもいいが、甲絵画か同価値の金額を返してほしい
→同時履行の抗弁・甲絵画の返還債務の履行不能と同時に代金返還債務も履行不能・現存利益と相殺を主張したい
【解除前に滅失した場合、危険負担は問題になるか?】

(Aの再反論)

・同時履行の抗弁権は、甲絵画滅失によって双務契約類似の状況ではなくなったため要件を満たさない
・返還義務があるとすれば現存利益の範囲だが(121条類推)、現存利益はない
 

2について

STEP1 訴訟物の選択

(取消し)民法9条に基づく売買契約の取消しに基づく不当利得返還請求権
(無効)CのBに対する意思無能力を理由とする売買契約の無効に基づく不当利得返還請求権
(追認)(訴訟物にはならない)

STEP2 請求原因

(取消し)
契約時においてCは成年後見人ではないので、民法9条の要件を満たさないため、請求原因がない

(無効)
無効主張できるのは当事者であるAしかできないのが原則
→Cはできる?
←成年後見人は被後見人の財産に関する法律行為について被後見人を代表するため、Cが主張できる(859条1項)

(追認:Bから無効主張されたことに対する反論?)
無効な法律行為については追認できないのが原則(119条本文)
しかし、新たな法律行為として追認することは可能(119条但し書き)
 

フレームワークを使って問題分析をする際のポイント

旧司法試験民法の第1問は、条文的に明確に規定されていない内容が問われており、ややもすれば単なるむき出しの利益衡量(意思無能力者のAは保護すべきだ)を展開して法律論から離れた作文になりがちな問題だと思います(1(2)の問題は結構悩みましたし、いまだにすっきりしません)。
しかし、こういう問題こそ、条文または原理原則にしがみついて議論することが重要です。

また、難しい問題だと、考えているうちに複数の問題が絡み合って何が何だか分からなくなることがあります。
それを防ぐためには、①訴訟物ごとに考える、②当事者ごとの主張反論という型にこだわる、③条文の要件の充足不充足または解釈の問題に必ず持ち込むという姿勢が重要です。
前記の答案構成を見ていただくと、常に条文にひきつけて検討しようとしていることがおわかりいただけるのではないでしょうか。

司法試験直前期は、既に知識のインプットは一通り終わっていると思いますので、このように「どんな問題が出ても混乱せずにある程度の法律論を組み上げることができる」という訓練をするとよいのではないかと思います。

このコラムを読んだ方は、ぜひお手持ちの演習書や(旧/新)司法試験の過去問を使って、フレームワークに基づく問題分析のトレーニングをしてみてください。
フレームワーク本はまだ在庫はあります。15時までの注文であれば即日発送します(土日は遅れることがあります)ので、もしまだお持ちでない方はこちらからどうぞ。

ちなみに、択一と論文の比率は、択一がどれくらいとれるかという自信で変わってくると思いますが、毎日100問程度は解くようにしていました。

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